情報社会
説明するまでもなく令和の時代は情報社会ということができ、情報化は益々促進されるでしょう。
大手の企業などがテレビ、新聞、雑誌、書籍などで発信していた情報が、個人レベルでも手軽に発信できるようになったため、良くも悪くも非常に多くの情報が発信され、SNSなどを活用して広くシェアされます。
情報としてはネットで調べればある程度のことは出てきます。美味しい料理の作り方、美味しいお店、ファッション、芸能、観光地の情報、ほしい家電、税金の知識、法律の知識など、何でも手に入ます。
広告についても、昔は資金力の大きい企業がテレビCMを中心に広告を出していましたが、広告媒体がテレビ、新聞から、SNS、YouTubeなどの動画配信サービスに広がっています。
多くの情報の中に巧妙に広告が入り混じっている場合もあります。
TVや新聞などのマスコミ、政府の出す情報さえも広告意図や特定の人や団体への利益誘導する内容も多いです。
必要な情報も埋もれるほどの情報で溢れており、実は広告としてしている情報、根拠のない情報、誰かにだけ利があり、情報を受ける人が損してしまう情報などが山ほどあり、情報化社会である一方で、情報過多社会ともいえます。
情報社会では、情報量が増え情報の価値がどんどん下がっていきます。
さて、司法書士の業務に関する情報についてみていきます。
会社に関する登記は、ネットで検索すると一般的なものは出てきます。
相続登記も自分でできるような書籍が出ていたり、必要な書類が情報として挙がっていたりします。
もちろん、正しい情報とは限らないですし、実際にやると負担が大きかったり、そのまま鵜呑みにして進めると税金を余計に払う必要があったりと不利益なことも多いです。
情報化社会で生き残るためには
情報化社会で生き残るにはどうするのか。どこに価値が生まれるのか。
それは、
「グーグル検索できる情報やTwitterなどのSNSで発信、シェアされている情報に勝つ」
ということです。
情報で溢れかえっている状況下で、情報の選別ができず、情報に踊らされる人が多く見受けられます。
その中で、より正しい情報、より質の高い情報、知識、スキルを持つ必要があります。

例えば、
「コロナウィルスの影響で中国のトイレットペーパー工場が稼働しなくなり、トイレットペーパーが足りなくなる、今のうちに買いに急いだ方が良い」という情報がシェアされ、お店からトイレットペーパーがなくなりました。
その後、情報がデマだったということが分かりました。
「このお店が美味しい」「ここのお店や商品がおススメ」という情報を元に、お店に行列ができたりや人気が出たりする。ただ、元の情報はそもそも広告費の多い順番にランキングされていたりします。
作られたランキングが先で、実態が後ということも多いです。
また、成功するために必要な考え方として、
「根拠のない自信を持て」
「ポジティブ思考が大事だ」
との考え方があります。このポジティブ一辺倒の考え方も科学的には否定されています。
ポジティブだけでは逆に成果が落ちてしまいます。
ネガティブとポジティブを上手く使い分けること、個々人の性質にあったやり方をすることが重要であることが研究結果で数多く出ています。
【参考】
『自信がない人は一流になれる』
トマス・チャモロ-プリミュージク (著), 桜田 直美 (翻訳)
『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則 』
ガブリエル・エッティンゲン (著), 大田 直子 (翻訳)
書籍内では複数の研究結果が提示・引用されています。類書も出ています。
ポジティブ心理学やネガティブがどう影響するかは、研究が重ねられています。
内容が気になる方は立ち読みやWebで目次だけでも良いので、目を通してみてください。
多くの研究結果が出ているにもかかわらず、予備校の先生や自己啓発の書籍セミナーなどでは、ポジティブ至上主義とばかりに主張されています。合格体験記にも多く見受けられます。
これは個人の経験を一般化してしまっているからです。
実際は、努力を重ねる過程や、実力がついたり、結果が出たりしたから自信がつくのです。
振り返ると自信と不安が混在して前に進んでいることが大半ですし、一般化するには弊害が多すぎます。
根拠のない自信を持つことにより、逆に結果が出ず、精神的に良くない状況になってしまうことも多々あります。
ジャンルにも依りますが、「結果を出すために行動ができ、結果が出る過程に対してはネガティブな人」が一番成果が出やすいです。
自信は実力とともにつくものです。ネガティブな人は、実力を等身大で評価できているため、努力を積み重ねることで謙虚に実力をつけていけば自信がついてきます。
目指すは、自信をつけることではなく、根拠のない自信を持つことでもなく、実力をつけることです。
また、ネガティブな方は危機管理能力が高く、準備を徹底します。
もちろん、ネガティブ過ぎて行動やチャレンジができないと何も起きません。
そもそも、「ポジティブ」という言葉は、一般的な使われ方と心理学的な定義とはまた違います。
ポジティブとは、ネガティブも素直に受け入れるというニュアンスがあり、日本の武道でいうところの「中庸」、他の言葉でいうと「ニュートラル」という方が近いかもしれません。
別途、記事としてアップする予定です。 直ぐに詳しく知りたい方は書籍を読んでみてください。
生き残る専門家
さて、それらを踏まえて我々司法書士は、今後どうあるべきか。
今後は、ウェブ上の情報を超える専門性の高さ、直接のコミュニケーションによる最適な提案をしていくことが価値になっていきます。
定型の手続きをより効率良く工場のようにこなしていくだけでは、価値は上がらず、代行業になってしまいます。
会社設立の場合
ウェブで会社設立の際に必要な定款のひな形を検索すると、直ぐに手に入ります。
ただ、ひな形では抜けが出てしまう部分、法的リスクをどう考えるか、税務リスクをどう考えるか、事業内容と税金の関係、補助金や融資の関係、口座開設の問題をどうクリアしていくか。ウェブ上では全て網羅的に解決することは難しいです。
また、付加価値を付けるには、補助金の相談、融資の相談、オフィス家具やOA機器、名刺作成、ウェブ制作の会社、事業開始後に連携できる業者の紹介など、ウェブのみでは完結しない部分を提供できるかが重要です。
許認可、補助金や融資の相談を受けると、事業計画を立てる必要もあります。その相談に対応したり、必要な専門家を紹介したりできると、あなたに依頼する価値が上がります。
相続・事業承継の場合
ウェブに限らず、テレビCMを含めて広告力の強い金融機関、不動産業者などが多くの情報発信をしている。情報発信よりもむしろ広告に近い形で自社の扱うことができる商品のメリットを強調することがほとんどである。
また、生前の対策は、税金対策が多いのも不動産、融資(借入)による対策や保険等の金融商品の販売に繋がりやすいため、非常に量が多くなっている。
対策の必要性が高い紛争回避や認知症対策は、時間や手間がかかる割に、商品の設計が少ないため、大手の金融機関や不動産業者などは、シンプルな情報のみで専門性の高い情報は発信されていない。
遺言書の作成についても、簡易にできる制度の紹介や銀行の商品の紹介などが多く、紛争回避のノウハウや認知症対策などが盛込まれているのは少ないです。
認知症対策としての民事信託もシンプルな案件をメインにしている方がほとんどです。複雑な案件や
情報発信側としては、複雑で時間のかかる案件の受注よりもシンプルな事案の受注がほしいため、専門性の高い内容、複雑な内容の情報発信はあまり見かけない。
事業承継も本来は、内部承継、外部承継、M&Aなど選択肢は複数あります。本当に当事者にとって良い選択肢ではなく、事業承継に関しては、大手コンサル会社、金融機関等の商品(サービス)として存在するM&Aの情報で溢れています。
その他
登記や裁判などの独占業務は、無資格者はできないので、需要は残ります。
また、新しい制度の研究や法改正の情報などは、迅速に質の高い情報はネットには上がっていませんので、専門性が発揮できます。
そして、何よりも、資格者としての高い倫理、ミスが許されない実務を積み重ねた経験とマインドが司法書士の価値であり財産です。
資格のない方が表面的に知っている情報でするサービスとは、そもそも根本的な責任感、倫理観含め、意味合いが違います。
どんなに情報で溢れても、その高い職業倫理は、価値を高め続けるものだと確信しております。
まとめ
型にはまった同じ作業のみの業務では、価値を維持し続けるのは難しいと考えています。
今後も価値のある専門家であるためには、
ネットやSNSの情報を超える高い専門性と高い職業倫理を持ち続け、常に最新の一次情報を取得し、目の前の課題や相談者に対して、柔軟に対応すること
だと考えています。
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