従来の取扱い

会社の設立などに必要な電子定款の認証は、今までは、
・発起人等が窓口に行って、手続きをする
・発起人等が定款作成の代理人(司法書士等)に(紙の)委任状を渡して申請する方法
(司法書士が電子申請をして、紙の委任状を窓口に持っていき、紙の定款をもらいに行く)
・発起人等によるテレビ電話方式による認証(要電子署名)
※平成31年3月29日から
というやり方でした。発起人等の「等」は、設立時社員なども含む趣旨です。
ただ、業務として何度も手続きをする士業と違って、これから会社を設立しようとする普通の人が、一回きりの手続きのために電子署名を持っていることは非常に稀です。そのため、発起人等によるテレビ電話方式による認証は全然活用されていませんでそした。
あまりにも実務現場と乖離した制度でした。
一般的には、2つ目の代理人(司法書士)が、定款作成の(紙の)委任状をもらって、電子申請をするのですが、結局、公証役場に紙の委任状などを提出しに行くというのが多いでしょう。
しかし、今回の変更で、公証役場に物理的に行かずに手続きができるようになりました。
コロナによる緊急事態宣言が出されるなどの影響で、一気に制度改革が行われました。
そもそも、公証役場は、支払いは全て当日現金ですし、(数は少ないですが)FAXしか使えない公証役場があり、非常に不便でした。
これを機会に他の手続きも改善されることを期待します。
テレビ電話による認証制度の拡充
さて、テレビ電話による認証制度が2020年5月11日から開始します。
一言でいうと、
「公証役場に行かなくても電子定款の認証手続きができるようになった」
ということです。
そこで、情報の整理をしつつ、今後の業務のあり方を考えていきます。
まずは日本公証人連合会から以下の情報から確認しましょう。
日本公証人連合会の情報
令和2年5月11日からテレビ電話による認証制度がさらに便利になります。
2020年05月01日
この度、関係省令の改正により、令和2年5月11日(月)から、定款作成の委任を受けて作成された電子定款について、テレビ電話を利用して公証人の認証を受ける場合、その委任状を公証人に送付する方法として、電子署名の付された電子委任状を登記供託オンラインシステムを通じて送信する従来の方法に加え、新たに、「委任者の実印の押捺された紙の委任状と、委任者の印鑑証明書を郵送する方法」によっても可能になります。
また、委任状・印鑑証明書を郵送するときには、返信用のレターパック(返送先の宛名記載のもの)を同封していただく必要がありますので、ご留意ください。
なお、テレビ電話を利用しないで行う認証手続については、従前どおりであり、手続の変更はありません。
(日本公証人連合会HPより引用)
上記を簡単にまとめると、
・電子定款認証等は、公証役場に行かずに手続きができる
・事前に委任状(発起人➔司法書士)と(発起人の)印鑑証明書を郵送する
・テレビ電話越しに本人確認(免許証など)
・紙の定款は申請することにより郵送または窓口で受け取ることができる
という内容です。
今までは、本店所在地のある都道府県内の公証役場に出頭(出張)が必要でしたので、北海道を本店所在とする場合は、北海道の公証役場での手続きをする必要がありました。
他の都道府県の場合は、全国の司法書士にお願いして取りに行ってもらったり、出張したりしていました。
今後は、他の都道府県でも対応が可能になります。つまり全国対応が可能になります。
出張の楽しみがなくなるのは残念ですが、業務は効率化します。
どんな文書が対象になるか
認証を受ける文書は、電子文書に限ります。電子文書であれば、私署証書であると定款であるとを問いません。
現状では、電子文書のみの取扱いです。作成代理になじまない公正証書遺言などは、対応はしていないということです。
ただ、遺言書なども実現できなくはないと思います。将来的には公証役場に出頭しなくても手続きができるようになれば、施設から出られない方などのニーズに応えられるかと思います。
今後の手続きなどの変化
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電子文書に限ってですが、公証役場での本人確認がオンラインで良しとされました。
非常に便利です。作成者から作成代理の委任状をもらうことができれば、公証役場への出頭は不要です。
わざわざ公証役場に書類を取りに行くという移動時間とそのための人件費が削減できます。
この流れは止まらないと思います。
色々な手続きが不可逆的に進んでいきます。
不動産登記の本人確認もオンラインでできない理由は減ってきていますし、時間の問題かと思います。
現在は決済でもネットバンクでの振込も増えています。
不動産業者のオフィスや司法書士事務所などでの決済も増えています。
一方で、銀行に全員が集まる決済は減っていくでしょう。
そうなると、いわゆる決済事務所は、資格者の人数を大量に抱える必要はなくなっていきます。一日に色々な場所に移動することなく、一人の資格者がずっと事務所にいながら何件も決済の手続きをすることができるようになります。
業務効率、経営効率のための自動化、少人化、省人化などはどんどん進むでしょう。
大きな事務所も必要なくなると思います。
業務効率、利益率が上がるので、歓迎すべきことだと考えています。
今後は、益々手続きのみの業務は価値が相対化していくと考えられます。
手続きの効率化、早く正確に値ごろの業務として、数を大量にこなすか。
はたまた、専門特化し、付加価値の高い業務に注力するか。
より一層分かれていくでしょう。
弊所は、専門特化して、付加価値の高いサービスを提供すべく、日々法令や周辺知識、実務の研究をしています。
大量の手続きをこなすための採用をしていた事務所なども、組織の陣容のあり方は変わっていくでしょう。
変化を恐れずに、今から変化を見越した準備をしていきましょう。
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