経済政策で人は死ぬか?

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目次

書籍の特徴と感想

「経済政策で人は死ぬか?」~公衆衛生学から見た不況対策~
という書籍を読んでの感想を書いていきますのでお付合い頂ければと思います。

非常に興味深く思わず一気読みしました。

本書の特徴

著書は、公衆衛生学、政治社会学の方と、医師、医学博士、疫学者の方です。

経済政策を公衆衛生の目線で見て論じている本。 
経済政策により、人の生死に大きな影響があるということを事例とデータに基づいて解説。

緊縮財政は悪であるという根拠も多数あります。

リーマンショック後に書かれたものですが、ニューディール政策から、ソ連崩壊、ITバブルの崩壊、アジア通貨危機、ギリシャ経済危機、リーマンショックなど、各国のデータに基づき検証しています。

日本政府は、経済政策が人命に関わるという意識があるのか、問いただしたくなる内容です。

歴史から学ぶことはできます。
過去のデータを踏まえて、今、そして、今後どうすべきかのヒントが山盛りです。

※論文の引用などが多いため、本書の最後50ページくらいは引用ページです。
 なお、引用ページにも有用な情報があります。

結論

早速ですが、結論からお伝えしてしまいます。

経済政策で人は死ぬ。

これが本書の結論です。もう少しいうと、

「結局のところ社会経済政策はどんな薬よりも、手術よりも、個々の医療保険よりも、人の生死に大きな影響を与える」

です。

政府は、不況時においても、
「住宅支援、失業対策、年金、医療などに賢く投資することで国民の健康状態はよくなる」

ということです。

公衆衛生、福祉、医療などの充実と経済政策をしっかりとやることで国民の命を守り、経済も回復するというのが本書の結論です。

一方で、上記の予算を削るような緊縮財政は、人々の健康を害し、景気の景気の回復も遅れてしまうということでした。
医療についての予算はしっかりと確保し、公衆衛生、雇用維持の手当て、住居維持の手当て等は速やかにするべきです。

概要

不況になると起こること

不況になると悪いことばかりではありません。
不況=死亡者が増える ではありません。

交通事故をはじめ、いつくかの原因での死亡者は減るというデータもあります。

不況で労働時間が短くなると、余暇時間が増え、精神状態の改善、幸福度が上がる場合もあります。

また、外食を控えたり、嗜好品が値上がりしたりすることにより、健康的な食事、節約による喫煙、アルコール量の減少が健康をもたらすというデータもあります。

ただし、不況になり、ソ連崩壊後のロシアやギリシャのように、経済政策等が上手くいなかいと、

失業率が上がる

自殺者が増える

心臓疾患が増える

アルコール関連の死が増える

などの結果になり、平均寿命の短縮につながった。
さらに、GDPも大幅に落ち込み、経済の停滞も招いてしまった。

つまり、不況において、経済政策が失敗すると死亡者が増えるということになります。

健康が脅かされる要因

健康を脅かすのは、不況そのものが必然的にもたらすのではなく、政府予算の大幅削減、緊縮財政である。
健康よりも緊縮財政(公衆衛生、福祉、医療などの予算の大幅な削減による国家予算の黒字化)そのものを優先させると、国の発展にとって最も重要な国民に危害が及ぶ。

IMFの役割と政策

IMF(国際通貨基金)は、
国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資を実施することなどを通じて、
(1)国際貿易の促進
(2)加盟国の高水準の雇用と国民所得の増大
(3)為替の安定
を図ることを目的としています。

しかし、その金融支援をする際には、医療費削る減などの大幅な予算の削減を求めることが多い。
その政策は結果として、多くの死者を出したり、経済の回復を遅らせたりしてるのだが、何度も同じ政策を繰り返している。
お金を貸しているんだから、支出を抑えて返済しろ、とは筋が通っていないとは言えない。
しかし、経済を回していくことを考えると、国民の健康などの予算はしっかりと確保しておかないと、結果としてGDPは下がってしまっている。

データ上、緊縮策は、不況に歯止めがかからず、失業率が上がり、消費がますます落ち込み、経済がいっそう減速するというものばかりです。

適切な経済政策

適切な経済政策は、公衆衛生、医療費を削らずに、住宅支援、失業の対策、再就職の対策に予算を充てることです。

適切な経済政策が実施されるとどうなるか。

不況になり、失業率が上がる場合には自殺率も連動して上がることが多いが、上記の適切な対策をすると、失業率と自殺率は連動しなかった。

適切な経済政策によって、人の命が守れたということになります。

読後の感想

改めて、不況時は特に

経済政策によって人は死ぬ

ということが確認できました。
経済政策を判断決定する政治家は人の命を預かる重要な仕事ということになります。
(そんな気概は一部の政治家からしか感じられませんが)

政策判断には、医療の専門家だけではなく、免疫、公衆衛生はもちろん経済学、社会学など、様々なことを考慮した広く長い目で見た基準が必要だということも改めて確認できました。

コロナのことを耳にしない日がない中で、今感じている疑問の解消ができました。
あるべき対応とは何か、政府の政策に対して、雰囲気ではなく根拠ある判断・行動基準、今後経営していく上で重要視するべきもの、従業員の健康を守るために何をするか、選挙権を持つ一成人としてデータに基づく考えを持ちたい、という疑問や欲求に応えてくれる一冊でした。

司法書士として、様々な業種の経営者の相談を受けてきました。
家賃や給料のねん出をどうしようか、今後の経営をどうしようか。
などです。

従業員の立場の人のお話も聞きました。
住宅ローンにボーナス払いを入れているが、ボーナスカットになったらどうするか、
いつまでこの状況が続くのか、将来不安が尽きない。
などです。

姉は救急科の看護師です。
弟は救急救命士(救急車に乗っている人)です。
医療従事者からのお話もうかがいます。

本当に切羽詰まった、緊張感のある日々を過ごしている人は沢山います。

やり場のない虚無感を持っている方も多いです。
それでも多くの経営者、事業者、医療従事者は、限られた現状で何とかするしかありません。

実は、国もある程度の支援策は出しています。
スピード感はないし、現場実務を知らない役人さんが作ったのか、事務処理量の多い、複雑なものが多いですが。
政策としては、賃料の補助、雇用の維持のための助成金など、必要なものは予定はしています。
実行は全然遅いですが。

オリンピック次第なところもありますが、過去の不況のデータからすると、コロナ不況は1年は続きます。
継続的な支援をできるか、予算を組めるか、注視する必要があります。
決して緊縮財政で、出し渋ったり、重要な予算である公衆衛生、住居の確保、雇用維持、教育費などは削らないでいただきたいです。

倒産の回避、失業の回避、公衆衛生、医療体制の維持などができないと、コロナでの死者を超える死者が出ます。

国民の不安を過剰に煽るメディア、不安感の強い人たちのSNSの投稿などによって、不安が増幅し、過剰な制限に傾き、十分な補償や経済政策が図られないと、結果的には多くの死者を出すことになってしまいます。

データや論理よりも感情(恐怖、不安)で動く社会とそれを扇動するメディアと雰囲気を優先する政府。
人の行動は、データや過去の歴史の結果ではなく、心理的、感情的、感覚的な判断が優先してしまいます。

どうも政治家の保身や人気のための判断になりがちです。
そもそも様々な専門家の情報の検討、精査、統計データや各国の対応を十分検討しているのかさえも疑わしいレベルです。

真に国民のことを考えて動く政治家はごくわずかです。
だからこそその少数の政治家は応援します。

国家予算はしっかりと使うべきときに使う必要があるのだと思います。

保険医療、教育には十分な予算をかける。
今の日本は教育を軽視し過ぎです。

データの重要性、歴史から学ぶことの重要性を痛感しました。

本書については、色々な感想、他の感想を持つ人もいると思います。
それぞれが真剣に考えるきっかけになればと思います。

非常におススメの書籍です。

時間がいつもよりもできたという方は、是非この機会に読んでみてください。

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